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柔らかい彫刻、スポルプチャー(spolpture) のすごさ

メグロアソビ冒険隊はただいま次の企画について計画中。

目黒区美術館の夏の展覧会「中村直人 モニュメンタル/オリエンタル 1950年代パリ、画家として名を馳せた❝彫刻家❞」(会期:2023年7月15日(土)から2023年9月3日(日))をアイディアにひらめいたワークショップをしたいと思っています。





今回展示される作家・中村直人さんは、日本で彫刻家として活動した後、フランスに渡ってパリで画家として成功しました。彫刻家がなぜ急に画家に?それは、”彫刻は場所をとるので、滞在場所での制作活動が大変だったから”だという何とも現実的な(!)理由です。


さらに、画を描く途中に出来たカラフルなもみ紙、本当はゴミになる物を素材として作品に取り入れて、面白い作風を生み出したのだとか。


今までと違う(決して快適ではない)状況でも、クリエイティブな展開に持ち込む柔軟さは、MAB自体もこれまでの活動で大切にしてきたところ。


今回、直人の彫刻家としての一面に倣って、MABは参加者と一緒に彫刻に挑戦したいと思っています。

とはいえ、彫ったり刻んだりはしません。粘土をつかう(彫塑・ちょうそ)でもない。

スポンジを使おうと思っています。





以前より、カラフルでフワフワなスポンジを面白いと思っていたMAB。軽くて、柔らかくて、小さな子どもでも扱える。どの家にも必ずと言っていいほどある親しみやすさも魅力で、いつかこの素材でワークショップをやってみたいと思っていました。


今回このアイディアを引っ張り出し、さてどんなふうな彫刻になるでしょう。

まずは大小色々なサイズのスポンジを持ち込み、そのいくつかを輪ゴムでまとめてみます。

さらに輪ゴムを引っ張りながらスポンジごとねじってみたり、いくつかのスポンジに切れ込みを入れてかみ合わせてみたり。


するとこれが思うような形にはならない。正確に言えば、スポンジの柔軟さと輪ゴムの張力のバランスがどう作用するのか、手を動かした1秒後にどんな形になるか想像がつかないのです。

これはぜひワークショップに参加して体感してもらいたい!「スポンジの スカルプチャー(彫刻/sculpture)だから、スポルプチャー(spolpture)と名付けちゃおう」と決めました。


スポルプチャーは、一つのピースを動かすと、そのピースがどんな場所に取り付けられるかはもちろん、全体の形まで変わってしまうこともある。「これは手を動かしながらスポンジの行方を見守るほかない」という感覚になります。


そんな風に格闘すること十数分。

出来上がったスポルプチャーは、どこが上でどこが後ろだかさっぱりわからないながら、想像したことのない形にたどり着きました。

角度や上下をひっくり返して見てみると、全然違うものなのじゃないかと思うほど。









この面白いかたち、もし作品だとしたなら、どうやって展示する?

試しに展示台を持ってきて、おいてみました。

前うしろがないものに正面を付ける、というわけです。

展示台にうやうやしく載せられると、なんだか本当に作品みたい。

そうなると、やっぱり一番よく見える、カッコイイ角度を探したくなるもの。


上から見たり、横から見たり、はたまたスポットライトまで持ち出して、光の角度や浮かび上がる影の形を変えてみたり。

「この色がアクセントになってるからこれを正面にしたいな」「この部品の形カッコイイからここに光が当たる様にしよう」


我ながら、なにをやってるのかわからない。けど、なんか楽しい。どんどんのめりこんでいきます。 これは面白い!参加者の皆と一緒に遊んでみたい!とその場にいた全員が思った瞬間でした。


さらにいたずら心で、このスポルプチャーにシールで目をつけて不思議な生き物にしてみたり(ということは顔の”正面”がどこかを決めることと同じ)、ストッキングやシフォンの布の中に作品ごと入れて、透ける色やなめらかな形を面白がってみたり、どんどん想像力が膨らみます。


家庭には必ずあるスポンジですが、実は大判のものは作品を保護するための緩衝材として美術館でもよく使われる素材です。 今回はその梱包材の端材も取り入れたワークショップにすることにしました。


親しみのある素材を使って作品を作る。捨てられる素材も使う。自分では意図せずうまれた形を作品に取り込む。あれ、これ直人さんと同じアプローチじゃない??

色々なピースがぴたりと集まった瞬間でした。


一度スポルプチャーを作ってみると分かることがあります。

それは、彫刻は360度、その生み出す影や空気感まで意識されながらつくられているかも、ということ。

何か特定の生き物などをかたどった具象のモチーフだとしても、顔だけがその作品の「見どころ」ではないかも、ということ。


そして、展示台に置かれた彫刻と、おかれる前、どこかよその場所におかれていたり、手の中にあった彫刻は全然別物に見えること。光の当て方まで考えられた展示台の上の彫刻は、いうなら「ベストポジションでキメッキメ」な状態だということ。ただし、ベストポジションは一つとは限らなくて、展示をする人によってはおすすめの角度が違う可能性もあります。


実はここまで組み立てておきながら、なんと、まだ中村直人作品を見ていないMABメンバー。こんな感覚を携えて、ワークショップ参加者の皆さんと直人さんの彫刻をみたら、どんなことを感じるだろう?どんな発見があるだろう?今からとても楽しみにしています。


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